古くからほかの大陸から離れていたおかげで独特の生態系を持っているニュージーランド。生き物ではキーウィなどの飛べない鳥たちがよく知られているが、植物もキーウィに負けずNZ固有のものが多く、なんと植物の固有種率(=NZでしか見られない)は80%にものぼっている。
先住民マオリはこの土地に生える植物の特徴をよく把握し、それらを生活に密着させて暮らしてきた。今日紹介するのは、マオリ族が最もよく利用した植物の一つで、「キャベッジ・ツリー」と呼ばれる木だ。
・・キャベツの木!?一体どんな木なんだろう?伝統的な利用方法もあわせて紹介してみよう。
ニュージーランドの植物「キャベッジ・ツリー」
以前『トレッキングをするなら覚えておきたい植物10選』の記事でも紹介した、NZ固有の植物「キャベッジツリー(Cabbage Tree、学名はCordyline australis)」。見た目としてはドラセナやユッカ、もしくはヤシのような風貌をしている木だ。
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キャベッジツリーは一回見たら忘れない木だ。森のちょっと開けた場所や海岸沿いなんかにニョキッと生えていてよく目立つ上、細長い幹のてっぺんに細長い葉を茂らせただけの単純で特徴的な姿はかなり人目を引く。
園芸品種としても重宝されるので、森に行かずとも住宅街や公園でも目にする機会も多い。キャベッジツリーは、ニュージーランドの風景によく溶け込んだ、国を代表する植物と言ってもいいだろう。
キャベッジツリーの名の由来は?
人里に近い環境に育つ木なので、キャベッジツリーは古くから人々に利用されてきた。
「キャベッジツリー」という妙な名前の由来は、新芽の部分がマオリ族やヨーロッパからの初期入植者の食料として利用されていたことに由来する。18世紀にNZを航海したキャプテン・クックの一団がマオリ族をまねてこのキャベッジツリーの新芽を湯がいて食べ、調べてみると栄養素がヨーロッパの野菜(キャベツなど)に近く野菜代わりに食べられることから、「キャベッジ・ツリー」なんて妙な名前がついてしまったのだという。)この論法だったら、ひょっとしたら「白菜の木」とか「レタスの木」になっていたのかもしれない。
マオリはこの木を積極的に利用し、新芽や根を食べ、葉は編んでカゴなどを作っていたという。
面白いのはヨーロッパからの入植者たちで、この木の幹に耐火性があることを突き止め、幹が空洞化した老木を切ってきては煙突にして使っていたのだそうだ。たしかに原生林にあるキャベッジツリーの老木は空洞がある木が多く、高さもゆうに10mを超えるものも多い。森に生きたブッシュマンならではの発想だと思わずにはいられない。
現代でも重宝されるキャベッジツリー
キャベッジツリーはとても強い植物で、直射日光や風にも強く、荒れ地でも育つことができる。この特徴を利用して、現代のニュージーランドでは植林活動でも盛んに植えられている。マヌカやキャベッジツリーと言った荒れ地でも育つ木を先に植えて小さな森を作り、その後に大木になる種類の木の苗を植えれば、牧草地も森に戻すことができるというわけだ。今も昔も変わらず重宝されてきたキャベッジツリー。NZに旅行する機会があったら、ぜひこの木を探してみてほしい。
- 参考URL:
DOC- Cabbage Tree
TERRAIN – Cabbage Tree
Last Updated on 2022年9月24日 by 外山みのる
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